家が寒いのは“壁”じゃなくて窓。熱の逃げ方から見直す冬対策

冬になると家の中が一気に冷え込んで、

「断熱材が足りないのかな」「壁が薄いのかな」と思いがちですが、
実際には 窓やドアなどの開口部が一番の弱点 になることが多いです。

理由はシンプルで、

  • ガラスは熱を通しやすい

  • 壁に比べればどうしても薄い

  • 開閉部にはどうしても“すきま”が生まれる

からです。


🧾 参考文献

  1. イプロス「住宅における断熱のポイント」
     開口部からの熱損失 約48%
     https://marketing.ipros.jp/contents/basics/basic-thermal-insulation3/

  2. ウェザーニュース「家庭の省エネは窓から」
     開口部からの熱損失 約58%
     https://weathernews.jp/s/topics/201812/180085/

※リンクが切れていたら教えてください。


■ 熱が逃げる仕組みは3つだけ

暖房で温めた熱が外へ逃げるルートは、ざっくりこの3つです。

熱の移動の種類窓まわりで起きていること主な対策
伝導冷たいガラスに触れた空気が冷やされる内窓(二重窓)・断熱性能の高いサッシ
放射室内の熱が赤外線としてガラスを通って外へ逃げるLow-Eガラス/Low-E窓フィルム
対流すきま風・換気口などから冷たい空気が入る気密テープ・モール・建付け調整

「断熱」という言葉で一括りにされがちですが、
実際には この3つをどこまで弱められるか が勝負です。


■ 伝導:内窓は“ガラスを厚くする”イメージ

伝導は、触れているところから熱が移動する現象です。

  • 冷えた外気 → 外側ガラス

  • 外側ガラス → 室内側の空気

…という流れで、じわじわ室内の熱が奪われます。

ここで効いてくるのが 内窓(二重窓)

  • ガラスが2枚になり、その間に空気層ができる

  • その空気層が「熱が伝わりにくいバリア」として働く

ので、ガラスからの冷えの伝わり方をかなり弱められます

ただしデメリットもあって、

  • 価格がそれなりにかかる

  • サッシ形状や開閉方法によっては設置できない場所もある

  • 開け閉めの手間が増える

といった点は、現場でよく出る話です。


■ 放射:Low-Eガラス/Low-Eフィルムの担当

放射は、赤外線として熱が移動する現象です。

  • 室内の暖房で温まった壁・床・人・家具

  • そこから出る赤外線(熱)が、窓へ向かって飛んでいく

  • ガラスを通って、じわじわ外へ逃げる

これが「なんか部屋が冷えやすい」正体のひとつです。

ここで効いてくるのが Low-EガラスLow-E窓フィルム です。

  • ガラス表面の性質を変えて、赤外線の“出入り”を抑える

  • 室内から外への熱の逃げ方をゆるやかにする

という役割があるので、
暖房で温めた熱が、ガラスからダダ漏れするのを減らすことができます。

数値は製品ごとにまったく違うので記事ではあえて書きませんが、
「何もしていないガラスより、逃げ方を明らかに抑えられる」
──ここだけを事実として押さえておけば十分です。


■ 対流:すきま対策はやりすぎ注意

対流は、空気の流れによる熱移動です。

  • サッシのわずかなすきま

  • ドア下のすきま

  • コンセントまわり

  • 24時間換気の給気口

こういった場所から、冷たい空気が入り込みます。

ここへの対策は、

  • モヘア(サッシのフサフサ)を交換する

  • ドアボトムにモールやブラシを追加する

  • ひどいすきまはパッキンやテープで埋める

などがありますが、
今の家は24時間換気が義務になっているので、
やりすぎて完全密閉に近づけるのはNGです。

「すきまをゼロにする」のではなく、
「明らかに無駄なすきまを減らす」くらいがちょうどいいバランスです。


■ カーテンは“内・内窓”としての補助役

断熱カーテンや厚手のカーテンは、ざっくり言うと

「室内側にもう1枚、ゆるい内窓を足す」イメージ

です。

  • ガラスから落ちてくる冷気を、カーテンが受け止めてくれる

  • 窓際の「冷たい空気の流れ(コールドドラフト)」をやわらげる

という意味で、体感温度を上げる補助としては優秀です。

ただし、

  • 暖房の熱(放射)がガラスから外へ逃げる現象そのものを止めるわけではない

  • 日中はカーテンを開ければ効果はゼロ

  • ガラスそのものの性能は何も変わっていない

ので、“メインの断熱”として過信するのは危ない立ち位置です。


■ じゃあ何からやるのが現実的か?

現実路線で行くなら、優先順位はこんな感じになります。

  1. 放射をいじる(Low-Eフィルム/Low-Eガラス)

    • 暖房熱がガラスから逃げるのを減らす

    • 夏の直射日射のジリジリも同時に対策できる

  2. 伝導をいじる(内窓)

    • ガラスを2枚にして“冷たい面”から室内を遠ざける

    • 結露の発生もかなり抑えやすくなる

    • (窓や網戸の開閉が面倒になるデメリットがあるので2番目にしています)

  3. 対流をいじる(すきま対策)

    • ドア・窓のすきまを整えて、足元の冷えを減らす

    • ただし換気とのバランスを崩さない

  4. 体感を底上げ(カーテン)

    • “内・内窓”として、窓際の冷えをやわらげる


■ まとめ|「窓のどの熱を、何で止めるか」を分けて考える

  • 「断熱が弱い」という一言で片づけず、
    伝導・放射・対流 のどこが問題なのかを見る

  • 開口部(窓・ドア)は、壁よりも優先的に対策すべきポイント

  • カーテンは 内・内窓としての補助
    メインの対策は Low-Eフィルム/内窓/すきま対策 側にある

窓まわりの“熱の逃げ方”を整理してから手を打つと、
余計な買い物をしなくて済みます。