内窓(二重サッシ)を安易に勧めない理由。窓のプロが「断熱フィルム」を検証する本当のワケ


 「冬、窓際が寒い。やっぱり内窓(二重サッシ)がいいですよね?」 最近、このようなご相談を多くいただきます。

確かに内窓は、空気の断熱層を作ることで圧倒的な暖かさを手に入れることができます。数値上の断熱性能は文句なしに最強です。でも、窓の構造と現場を長年見てきた私には、どうしても手放しで勧められない「裏側」があるんです。

今回は、カタログスペックには載っていない「内窓の代償」について。そして、なぜ私が今、あえて手間のかからない「窓フィルム(低放射)」という選択肢を真剣に検証しているのかをお話しします。

1. 想像してください。毎朝の換気の「4ステップ」を

 「内窓にすると開け閉めが2倍になりますよ」と聞いても、意外とピンとこないかもしれません。 具体的に、右側の網戸を使って「正しく」換気する際の手順を書き出してみます。

  1. まず、手前の内窓の「左側」を開ける(奥にある外窓の鍵=クレセントに手を伸ばすため)

  2. 外窓の鍵を開錠する

  3. 一旦、内窓の「左側」を閉めて、今度は「右側」を開ける

  4. それから、ようやく「外窓の右側」を開ける

…これ、毎日、一生続けられますか? ちょっと空気を入れ替えたいだけなのに、窓の前でガチャガチャとこの複雑な手順を踏まなければならない。実際に生活してみると、この「2倍以上の手間」は相当なストレスです。そして、この「面倒くささ」が、次に挙げる致命的な問題を引き起こします。

2. 夏に露呈する「網戸を左にする」という最大の間違い

 面倒になってくると、人は手順を飛ばします。内窓を左に寄せたまま、外側の窓も左に開けて換気しようとする。実はこれが、夏場に地獄を招きます。

ここで一つ、皆さんに知っておいてほしい「窓の作法」があります。 網戸は、必ず窓の「右側」になければならないという絶対ルールです。

窓を半開きにしたとき、網戸が右側にあれば、サッシのフレーム同士が重なって隙間はできません。しかし、網戸を「左側」に置くと、サッシの構造上、中央に指一本分ほどの大きな隙間ができてしまいます。

これでは網戸の意味がありません。蚊や小さな虫にとって、そこは「どうぞお入りください」と言わんばかりの自由通路になります。

内窓を入れたことで開閉が煩わしくなり、正しいポジションを守らなくなる。結果として「冬は暖かいけれど、夏は虫が入ってきて換気もままならない家」になってしまうケースが後を絶たないのです。

正直に言います。この「網戸の右側ルール」や、運用上のリスクを説明できないサッシ屋やハウスメーカーは、窓の構造を理解していない、レベルの低い業者だと思ったほうがいい。それくらい基本中の基本の話なのです。

3. 地震や経年変化。将来「さらに重くなる窓」の恐怖

 さらに考えてほしいのが、将来のリスクです。 長い年月や地震の揺れによって、家の窓枠には必ずわずかな「歪み(ゆがみ)」が出ます。

歪みが出れば、当然サッシの動きは悪くなります。想像してみてください。「ただでさえ重くて開けるのが面倒な窓」が、歪みのせいで「さらに重い窓」に変わり、それが内と外の2枚分(二重)になるんです。

1枚開けるだけでも一苦労なのに、それが2重。もはや換気自体が苦行になります。 設置した瞬間の暖かさだけを売って、将来的に発生する「開閉の重圧」やメンテナンスの手間を無視する。それはプロの仕事ではないと私は考えます。

4. だからこそ「窓フィルム(低放射)」という選択肢

 そこで私が今、注目しているのが窓フィルムによる「低放射(Low-E)」対策です。

フィルムの役割は、空気層を作ることではなく、室内の暖房熱の放射を抑えて外へ逃がさないこと、つまり部屋の保温。この方法なら、多くのメリットを維持できます。

  • 今あるサッシの、軽快な開閉動作を一切邪魔しない。

  • 「右側網戸」のルールを壊さず、夏も隙間なく快適に換気ができる。

  • 将来、家が歪んで窓が重くなっても、ストレスは「1枚分」で済む。

つまり、今の窓の良さを殺さずに、性能だけを底上げできるんです。

結論:理論上の「最強」よりも、生活の「最高」を。

 もちろん、内窓の断熱性能は素晴らしいものです。場所によっては、内窓の「空気層」とフィルムの「低放射」を重ねるハイブリッドが最強の答えになることもあるでしょう。

でも、私は「ただ温かくなればいい」という提案はしたくない。 10年後もお客さんがストレスなく窓を開け閉めでき、夏も冬も快適に過ごせるかどうか。そこまで責任を持ちたい。

その確信を得るために、現在、私自身の環境で断熱フィルムの検証を行っています。数値上のデータだけでなく、「これなら自信を持って遠野の皆さんに勧められる」という実感を伴った結果を、またここで報告させていただきます。